サムネOKにしようね、という著作権法改正のお話

美術の著作権2019──データベース・アーカイブ・美術館:デジタルアーカイブスタディ|美術館・アート情報 artscape

「美術の著作物等の展示に伴う複製等に関する著作権法第47条ガイドライン」(一般社団法人日本美術家連盟・一般社団法人日本美術著作権連合・一般社団法人日本写真著作権協会・公益財団法人日本博物館協会・全国美術館会議・一般社団法人日本書籍出版協会平成31年1月22日策定 原文PDF→https://www.j-muse.or.jp/02program/pdf/chyosakuken47guide.pdf

(以上20190929追記)

 

これは、第196回通常国会において平成30年5月18日に「著作権法の一部を改正する法律」が成立、同年5月25日に平成30年法律第30号として公布されました。本法律は、一部の規定を除いて、平成31年1月1日に施行される予定。

著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)について | 文化庁

[2]作品の展示に伴う美術・写真の著作物の利用(第47条関係)
 技術進歩に伴う見直しとして,美術館等において,展示作品の解説や紹介を目的とする場合には,必要と認められる限度において,小冊子に加えて,タブレット端末等の電子機器へ掲載できること等を規定(第1項,第2項)しています。これにより,例えば,会場で貸出される電子機器を用いて,より作品の細部を拡大して制作手法を解説することや,展示方法の制約により観覧者が目視しづらい立体展示物の底面や背面の造形を解説すること等が権利者の許諾なく行えることとなるものと考えられます。
 また,同様に近年の情報通信技術の発展により,美術館等に行く際に,施設のウェブサイトやメールマガジン等で展示作品の情報を調べることが一般的になっていることを踏まえ,展示作品に関する情報を広く一般公衆に提供することを目的とする場合には,必要と認められる限度において当該作品に係る著作物のサムネイル画像(作品の小さな画像)をインターネットで公開できること等を規定(第3項)しています。

条文そのものは以下。

(美術の著作物等の展示に伴う複製)
第四十七条
3 原作品展示者及びこれに準ずる者として政令で定めるものは、展示著作物の所在に関する情報を公衆に提供するために必要と認められる限度において、当該展示著作物について複製し、又は公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該展示著作物の種類及び用途並びに当該複製又は公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

(20181106追記)サムネ画像の公開はあくまで「作品の展示に伴う」ケースに限定されるようです。

(20190929追記)20190122策定のガイドラインにより、自館コレクション(展示する目的で収蔵している作品)の画像を自館ウェブサイトで常時公開はOKとされています。

美術館・博物館の撮影可否パターン(なかのひと向け)

みんなだいすき美術館博物館の撮影可否問題について、館のなかのひと向けに整理。寄託とか屋外彫刻とか含めるといろいろあるのでアレですがひとまず参考程度に(ご利用は自己責任で)。
鑑賞者のみなさまは、撮影OKだからといってSNS掲載OKではない(むしろだめなケースが多い)のでご注意を!
なお私のスタンスは、公有財産をご利用いただくときはなるべく国民の権利を制限しないかたちで(制限するならきちんと理論武装を)、です。

所蔵品?借用品? 撮影どうする?(私的利用前提) 展示作品が著作権保護 許諾要否と理由付け
コレクション展 撮影NGにしたい 期間満了 所有者権限で不可
or
施設管理者権限で不可
コレクション展 撮影NGにしたい 期間内 所有者権限で不可
or
施設管理者権限で不可
コレクション展 撮影OK(SNS不可)にしたい 期間満了 許諾不要*1SNS不可の理由付けが難しい?
コレクション展 撮影OK(SNS不可)にしたい 期間内 許諾不要*2*3SNS著作権により不可
コレクション展 撮影OK(SNSもOK)にしたい 期間満了 許諾不要
コレクション展 撮影OK(SNSもOK)にしたい 期間内 著作権者の許諾
企画展 撮影NGにしたい 期間満了 施設管理者権限で不可
or
所有者が許諾しない
企画展 撮影NGにしたい 期間内 施設管理者権限で不可
or
所有者が許諾しない
企画展 撮影OK(SNS不可)にしたい 期間内 要借用先(所有者)の許諾*4SNS著作権により不可
企画展 撮影OK(SNSもOK)にしたい 期間内 要借用先(所有者)と著作権者の許諾
企画展 撮影OKにしたい 期間満了 要借用先(所有者)の許諾

*1:作品の安全に配慮しよう!

*2:公衆送信その他著作権法に触れる行為はだめよなどの注意掲示義務等、館の責任がどの程度求められるのかは不明。まあ相応の努力はすべきでしょう

*3:収蔵時に著作権者にも一言説明しておいたほうが揉めないかも

*4:開催前に著作権者にも一言説明しておいたほうが揉めないかも

美術館・博物館における著作権に関わるお仕事についてのメモ

日々の業務で引っかかる都度調べてはtwitterに疑問点を投げております(が、なかなか識者がサクっと解説してくださるということはありません)。備忘録代わりにまとめておきます。随時更新。

美術館内でのコレクションの撮影禁止根拠についてのお話

よく分からないままです。

(20180905追記)いわゆる「顔真卿自書建中告身帖事件」で示された所有権と著作権の分離でFA、とのご教示をいただきました。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

博物館や美術館において、著作権が現存しない著作物の原作品の観覧や写真撮影について料金を徴収し、あるいは写真撮影をするのに許可を要するとしているのは、原作品の有体物の面に対する所有権に縁由するものと解すべきであるから、右の料金の徴収等の事実は、所有権が無体物の面を支配する権能までも含むものとする根拠とはなりえない。料金の徴収等の事実は、一見所有権者が無体物である著作物の複製等を許諾する権利を専有することを示しているかのようにみえるとしても、それは、所有権者が無体物である著作物を体現している有体物としての原作品を所有していることから生じる反射的効果にすぎないのである。若しも、所論のように原作品の所有権者はその所有権に基づいて著作物の複製等を許諾する権利をも慣行として有するとするならば、著作権法が著作物の保護期間を定めた意義は全く没却されてしまうことになるのであつて、仮に右のような慣行があるとしても、これを所論のように法的規範として是認することはできないものというべきである。

ありがとうございます!いいですね、所有権者が複製許諾権を持つかのような慣行は「法的規範として是認することはできない」と、極めて明快です。

(20180904追記)おすすめの知財法本をご教示いただきました。

美術館・博物館における著作権に関わるお仕事についてのメモ - 気だるげに逃げるだけ(回文)

著作権ではなく、入館の際にそういう契約をしたとみなされる(そう書いてあるので)話ですね・・・。田村先生の知的財産法(書籍)が多分一番近いことを書いてあると思います。珍しい構成の本なので、ご参考に。

2018/09/04 10:13

b.hatena.ne.jp

ありがとうございます!これかな。 

知的財産法 第5版

知的財産法 第5版

 

 

ほんで、たとえばコレクション展の撮影が原則可能な美術館(直接行って気づいたところを書いているだけなので網羅性は期待しないでください/細かい条件は館ごとに違うので確認してくださいね)。

よくあるご質問 | 京都国立近代美術館

Q: 作品の撮影(デジタルカメラ・携帯電話のカメラを含む)はできますか?

A: 館内の撮影については、下記のとおり展示場所により取り扱いが異なります。撮影不可の場所もございますが、ご了承くださいますようお願いいたします。

1) 1階展示ロビー及び4階コレクション・ギャラリーでは、フラッシュ、照明および三脚等の固定物はご遠慮ください。また、企画展等を実施している時は、撮影できません。

入館時のお願い | 富山県美術館

当館での撮影は、下記の場所において可能です。ただし、動画撮影、フラッシュ、三脚のご使用や自撮り棒のご使用はご遠慮いただいております。

2階のコレクション展示の収蔵作品(寄託作品以外)

3階のデザインコレクション、瀧口修造、シモン・ゴールドベルク作品

...

よくある質問 | ご利用案内 | 横浜美術館

Q10.館内での写真撮影はできますか

企画展示室での写真撮影はお断りしています。コレクション展示室・グランドギャラリーでは写真撮影はできますが、フラッシュの使用はご遠慮ください。 なお、企画展であっても撮影が可能な場合もありますので、詳しくは館内スタッフにおたずねください。

FAQ|国立西洋美術館

作品の模写・撮影(含デジタルカメラ)はできますか?

本格的な模写はできません。当館が所蔵する作品(常設展示作品)については、写真撮影は可能です。ただし、フラッシュ等の光を発するものや三脚等は使用できません。なお、混雑の状況等により、撮影を全面禁止にする場合もあります。また、展覧会等で他の美術館等から借用した作品の撮影は一切禁止しています。

よくある質問 | 東京国立近代美術館

Q: 作品の模写・撮影(含デジタルカメラ)はできますか?

A: ...所蔵作品展での写真撮影は可能ですが、フラッシュや三脚のご使用はご遠慮いただいております。 また、著作権保護等のため一部撮影をお断りしている作品もありますのでご了承ください(作品横に撮影禁止のマークを掲示しております)。撮影の際には、4階エレベーターホールに掲げた注意事項を事前によくご確認ください。 なお、企画展での撮影は、借用の際の契約上原則的に禁止されております。

 

(20181106追記)展示種別・著作権保護期間別の撮影可否パターンを一覧にまとめました。

 

サムネOKにしようね、という著作権法改正のお話

(20181106追記)長くなってきたので別エントリに移行しました。

 

著作権保護期間が満了した所蔵作品の画像公開のライセンスについて

(20181128追記)長くなってきたので別エントリに移行しました。

 

 

デジタル作品の機器・媒体が旧式化したときの新しいメディアへの複製

 まだ受けてないです(20180903現在)。

(以下20190929追記)

togetter.com

 

静岡県知事記者会見(2016/4/13)美術館・博物館の大学附置機関化部分書き起こし

この静岡県知事記者会見はウェブに上がっています(静岡県/ふじのくにネットテレビ/1ch 知事記者会見/知事記者会見_2016年04月13日)。

そのうち公式が書き起こしをここ(静岡県/記者会見【ようこそ知事室へ】)にアップするようですが、とりいそぎ該当部分(5:18-)だけ書き起こしてみました。

 美術館に働いている学芸員がおられます。またこれから博物館、今年開館いたしまして、すでに1万人の入場者を記録したということです。さらに間も無く世界文化遺産としてのセンターが開館し、そこで研究される学者も選定が終わっております。この方達は件の職員なのでしょうか、それとも研究者なのでしょうか。

 県の職員だそうです。戦略監がそう答えました。これはおかしいと思います。やはり全国から何百人という応募のなかから選ばれた、しかも選んでいる方々は日本のトップクラスの先生方です。芳賀徹先生だとか、安田喜憲先生だとか、あるいは遠山敦子さんだとかさらに高階秀爾先生だとか、そういう方達によって厳選された、しかも国際公募もしてるわけですね。ですからそうした方達を件の職員とするのはおかしいと思っております。ですから県立の大学の附置機関として美術館なり博物館なりを位置付けるべきではないかと。
 ちょうど京都大学に人文研があります。あるいは独立の博物館として国立民族学博物館というのがありますが、そうしたところで研究されている人は、普通の学部の先生でも何か格が高いとすらみられるところがございます。もちろん佐倉にございます歴史博物館もありますけれども。そうしたところの方々のタイトルといいますか肩書きは教授、准教授、そうしたことなんですね。ですから、研究者としての学問の自由というものを保障しなくちゃいけないと存じます。
 ただ、そういう美術館ないし博物館の研究者はですね、研究一本、あるいは展示に関わるお仕事をしてくださっているわけですけれども、教育の現場にやはりその知見を戻していく必要があると僕は思っております。したがって、学部の教育はともかくも、ある程度ですね、恒常的に大学院のゼミを持つなどをして、若い青年達を教育するということをあわせまして、研究と教育を両立させると。で、どちらかといえばその研究や、社会的な貢献を博物館・美術館を通してやるということでございまして、これから組織をですね、さしあたっては県立大学の附置機関というようなかたちでやっていきたいと。
 いますでに、かつて県の総合研究機構というのがございました。これは今グローバル地域研究センターということになっておりますが、これも県立大学の附置機関と、付属機関ということになっているわけですね。附属して設置される、附置機関ということでございますけれども。そうした位置付けをこれからしていって、せっかく選ばれた先生方を、なにかあの、課長級より以下だとか部長さんより以下だとか、学問を行政の下に置くような、そうしたことがあってはならないと。我々は学問文化に奉仕するという、そういう姿勢を持っておりますので、こうしたことをやっていきたいと思っております。